NGOが支援している地域のひとつ。
フィリピン・セブ市の山奥のスラム。
ここの2つの部落で、それぞれ毎週、子どもたちへの炊き出しを行っている。
しかし、昨日、現地ボランティアから、こんな報告が、、
「とうとうここでも感染者が出たわ」
と。
新型コロナウィルスにより長期ロックダウン中のフィリピン。
中でもセブ市はいちばん状態が酷く、ロックダウンにより仕事がなくなったスラムの人々は、家の中で、感染と飢えの恐怖に怯えている。
町から少し離れた、山の部落は、各々が、その狭い地域を、自ら封鎖した。
ふもとの町との自由な行き来ができなくなり、人々の生活はより苦しく、不便になったが、こんな狭い地域で、クラスターが発生したら、ひとたまりもない。病院も薬局も近くにはない。
ロックダウンが始まって3ヵ月半、町では多くの感染者が発生し、厳しい警戒態勢がひかれているが、ここでは、少なくともこの山の小さな村の中だったら、比較的安心して出歩くことができる。
そういう状態だった。
しかし、とうとう、こんな山奥でひっそりと暮らす人々のところにも、コロナはやってきた。
詳しく話を聞いた。
感染した彼女は、先週、出産をした。
早産だったのだが、無事に赤ちゃんは産まれた。
町の病院には、たった一晩だけ、出産のために滞在した。
フィリピンの公立の産婦人科は、どこもそういう感じだ。
出産を終えたお母さんは、もうその日には、子どもと家に帰る。
これは産科だけでなく、どの科でも同様だが、フィリピンの公立の病院は、患者であふれている。廊下にもベッドが置いてある状態だ。プライベート・私立病院とは違い、ある程度安価で診てもらえる公立病院は、中も外(待合室に入る前の段階で外で受付を待ってる人たち)も人でいっぱい。もちろん貧困層にはいつまでも病院に居続けるお金もないし。
そして、彼女の場合は、ロックダウンによる外出制限もあり、交通の便も悪く、一晩病院に泊まった。
しかし、帰ってきてからずっと体調が悪い。
どうにも苦しくなって、なんとかまた病院に行った。
コロナと診断された。
おそらく院内感染だ。
病室だけでは足りず、廊下にまで患者があふれている状態の病院での、院内感染、、、想像するだけで恐ろしい。
そして、ここセブ市では、すでに医療崩壊が進んでいる。
また、赤ちゃんもいる。
入院治療はできずに、自宅療養という形になった。
産まれたばかりの赤ちゃんの世話をしなければならない。
早産で生まれた赤ちゃんは決して万全の健康体ではない。現在の医学的カテゴリーで言えば早産児だが、ひと昔前なら未熟児と言っていた。それなりのケアも必要。
しかしお母さんは体調が悪く、家族はみんな、というか家そのものが封鎖され、隔離されている。
家族も一切、外には出られない。
周りの住民の手助けでなんとかやってはいるが、医療的ケアはまったくない。
今、必要なのは、早産児のケアと、もちろん感染して症状が出ているお母さんの治療だ。
しかし、既に医療崩壊が起きている状態のセブの医療体制と、また、治療を受けるお金もない家族は、産まれたばかりの早産児を抱え、ただ家で閉じこもっているしかない。
おそらく似たような状況は、少し前の日本でもあったかもしれない。
世界にはいくらでもあるだろう。
そんなありきたりかもしれないけど、でも、とても深刻で、そして残酷な現実が、今ここにもある。
。。。
今、この村は、このような狭い部落で感染者が出たため、不要不急の外出が、より厳しく制限されている。基本的には、2週間、家からまったく出られない。
だから今週のここでの炊き出しはお休み。
ただ、自分らのNGOの支援活動は、地域の役場の許可を得ているので、今、部落の中でも特に助けな必要な家庭のために、お米と缶詰の配給をする準備をしてる。
準備ができたら、それぞれの家庭に食糧を届けに行く。
行政や医療のシステムからこぼれ落ちてしまった、ただ隔離されるだけで、何らかの補償もなく、社会からはじかれてしまっている人々。
政府はそんな人たちを、地域からの排除という対処はしても、助けようとはしない。
でも、自分は彼らを決して見捨てない。その心に寄り添い続けようと思う。
少しでも希望の光が見えるその時まで、現地の人々と力を合わせ、耐え忍び、なんとか共に生き延びていくために、、、
